著作権の間接侵害2(5)著作物投稿型(TVブレイク事件等)

前回は、ロクラクU事件及びまねきTV事件等、放送番組転送型の最高裁判決が実務に与える影響(特に、クラウド・コンピューティングを用いたサービスに与える影響)について、検討しました。今回は、TVブレイク事件等の著作物投稿型に関する事件について、検討してみようと思います。

 

1 著作物投稿型の概要

 この類型に該当するサービスには、動画共有サイト等が含まれ、多くの場合、下記のようなシステムの構成を採用しているのではないかと思います。このようなケースでも、複製や公衆送信の主体は、動画共有サイト等を運営している事業者なのか、それとも、著作物を投稿する各ユーザなのかという点が問題となるわけです。

 

 

TVブレイク.bmp

 

 著作物投稿型が放送番組転送型の場合と異なるのは、複製の対象となる著作物をユーザが自由に選択できるという点ではないかと思います。 放送番組転送型の場合、放送番組が第三者の著作物で、これを複製や公衆送信した場合、原則として、複製権侵害や公衆送信権侵害となるのに対し、この類型で投稿される著作物は、必ずしも第三者の著作物であるとは限らず、また、第三者の著作物であったとしても、権利者の承諾を得ている場合がありうるという点が異なるのだと思います。即ち、この類型では、ユーザの利用方法によっては、著作権侵害とならない利用が可能であるという点で、放送番組転送型とは、異なる基準を用いて判断する必要があるのではないかと思います。

 

2 裁判所の判断

 この点について、裁判所はどのように判断しているのでしょうか。TVブレイク事件(東京地裁平成21年11月13日判決)を確認してみようと思います。 この事件は、音楽著作物の著作権等管理事業者である原告が、動画投稿・共有サイトを運営する被告会社が主体となって、そのサーバに原告の管理著作物の複製物を含む動画ファイルを蔵置し、これを各ユーザのパソコンに送信しているとして、(1)被告会社に対しては著作権(複製権及び公衆送信権)に基づいてそれら行為の差止め(2)被告会社及び被告会社代表者Aに対しては不法行為(著作権侵害)に基づいて過去の侵害に対する損害賠償金及びこれに対する遅延損害金並びに将来の侵害に対する損害賠償金の連帯支払 を求めた事案です。この事案において、裁判所は、以下のように判断しています。

  

TVブレイク事件(東京地裁平成21年11月13日判決)                  著作権法上の侵害主体を決するについては、当該侵害行為を物理的、外形的な観点のみから見るべきではなく、これらの観点を踏まえた上で、実態に即して、著作権を侵害する主体として責任を負わせるべき者と評価することができるか否かを法律的な観点から検討すべきである。そして、この検討に当たっては、@問題とされる行為の内容・性質、A侵害の過程における支配管理の程度、B当該行為により生じた利益の帰属等の諸点を総合考慮し、侵害主体と目されるべき者が自らコントロール可能な行為により当該侵害結果を招来させてそこから利得を得た者として、侵害行為を直接に行う者と同視できるか否かとの点から判断すべきである。

 

 この判決では、主に、下記の3つの要素を考慮して判断しています。

    

@問題とされる行為の内容・性質

A侵害の過程における支配管理の程度

B当該行為により生じた利益の帰属

 

このうち、AとBは、放送番組転送型の場合と同じですが、@は、放送番組転送型とは異なり、著作物投稿型で、特に重要となる要素ではないかと思います。 即ち、著作物投稿型の場合、ユーザによって、違法にも適法にも利用されうることから、事業者が提供するサービスが、著作権を侵害する蓋然性の高いサービスであるか否かという点が詳細に分析されることになります。

 

TVブレイク事件でも、サービスにおける「構成の特徴」として、「「ムービー」「アニメ」「音楽」「ゲーム」など自主制作動画のみで構成されていくとは想定し難い分類や、「タレント」「韓流スター」のように放送物を複製することを当然の前提としたか、放送物を複製したものでなければおよそ一般の興味を引くものではない分類がある」「本件サービスにおいては本名を明らかにする必要がなく匿名性を有していることが、不特定多数のユーザによる違法なアップロードを誘発している」といった点から、結論として、「本件サービスは、本来的に著作権を侵害する蓋然性の極めて高いサービス」であると認定しています。

 

このような結論を回避するためには、著作物が投稿される段階で事前の審査を実施するか、少なくとも、事後的に著作権を侵害する可能性のある著作物を効果的に削除できる措置を施す必要があるのではないかと思います。 後者の例として、前述した判決の中では、少なくとも、下記の3つの方法が実用化されていると判示しています。

 

@動画ファイルのハッシュ値を利用する方法

A楽曲の音の波形の特徴を利用する方法

B削除申請用のプログラムを権利者に配布する方法

 

事業者が、適法にサービスを実施するためには、少なくとも、こられの処理と同等の手続きを実施する必要があるのではないかと思います。

 

3 結論

 著作物投稿型の場合、放送番組転送型と比較すると、「管理・支配」「利益の帰属」という要素もさることながら、「問題とされる行為の内容・性質」という要素が詳細に判断されることになります。これは、放送番組転送型の場合には、取扱う著作物が、第三者の著作物で、権利処理もされていないこが明らかな場合が多いのに対し著作物投稿型の場合には、自主制作動画等、ユーザが、アップロードしても複製権侵害や公衆送信権侵害とならない場合もあるためではないかと考えられます。

 そのため、この類型のサービスを提供する事業者としては、ユーザによる著作権侵害を誘発しないための工夫又は著作権侵害が発生してしまった場合の削除措置等について、予め十分な検討をしておく必要があると言えます。

以上

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