著作権の間接侵害2(3)放送番組の録画・転送型(ロクラクU事件、まねきTV事件等)

 前回は、間接侵害の類型のうち、侵害ツール提供型について、ときめきメモリアル事件やDEAD OR ALIVE2事件を例にとって検討してみました。今回は、先日判決が示されたばかりのまねきTV事件やロクラクU事件を例にとって、放送番組の録画・転送のサービス(まねきTV事件では、サービスを提供している事業者は、録画はしないでストリーミングするようですが、類似したサービスですので、ここでは、同じ類型のサービスとして紹介します。)について検討してみようと思います。

 

1 放送番組の録画・転送のサービスの概要

 過去に実際に問題となった放送番組の録画・転送のサービスでは、事案によってそれぞれ固有の事情はあるのですが、概ね、下記の図のような構成を採用しています。即ち、放送番組の録画・転送型のサービスを提供する事業者は、テレビアンテナで受信した放送を受信し、ユーザから録画指示(まねきTVの場合はストリーミング配信の指示)を受けると、これを複製機器に録画した上、ユーザは自宅に設置されたハードウェアを利用して視聴する(まねきTV事件の場合は、録画するのではなくストリーミング配信して、ユーザがこれを自宅で受信して視聴する)ことになります。

まねきロクラク.bmp

 

このようなサービスにおいて、@録画(複製)やストリーミング配信(公衆送信)の主体は、録画やストリーミング配信の指示をしたユーザになるのかそれとも複製機器やストリーミング配信機器を管理しているサービス提供者になるのかという点や、A個々の複製機器やストリーミング配信機とユーザとの関係が論理的に1対1対応になっているにもかかわらず、「公衆送信」しているといえるのか、といった点が裁判所で争われることになります。

 それでは、このような場合に、各争点について、どのように判断されることになるのでしょうか。ロクラクU事件及びまねきTV事件の最高裁判所の判決を参照しながら確認してみようと思います。

 

2 ロクラクU事件における複製行為の主体についての判断

 まず、それでは複製権(著作権法21条、98条)の侵害が問題となったロクラクU事件における、侵害行為(複製行為)の主体の判断について、最高裁判所の判断を、分析してみとうと思います。

 

最高裁判所平成23年1月20日判決(ロクラクU事件)

(a)放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて、サービスを提供する者(以下「サービス提供者」という。)が、その管理、支配下において、テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器(以下「複製機器」という。)に入力していて、当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合には、(b)その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても、サービス提供者はその複製の主体であると解するのが相当である。すなわち、(c)複製の主体の判断に当たっては、複製の対象、方法、複製への関与の内容、程度等の諸要素を考慮して、誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当であるところ、(d)上記の場合、サービス提供者は、単に複製を容易にするための環境等を整備しているにとどまらず、(e)その管理、支配下において、放送を受信して複製機器に対して放送番組等に係る情報を入力するという、複製機器を用いた放送番組等の複製の実現における枢要な行為をしており複製時におけるサービス提供者の上記各行為がなければ当該サービスの利用者が録画の指示をしても放送番組等の複製をすることはおよそ不可能なのでありサービス提供者を複製の主体というに十分であるからである。

 

 この判決は、下線部(a)のサービスを前提とし、下線部(b)で、「録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても、サービス提供者はその複製の主体であると解するのが相当である。」と結論付け、その理由を下線部(c)乃至(e)で判示しています。下線部(c)では、複製の主体に関する一般的な基準を示し、下線部(d)(e)の部分で、下線部(a)のサービスにおけるサービス提供者の役割を分析し、「単に複製を容易にするための環境等を整備しているにとどまらず、その管理、支配下において、放送を受信して複製機器に対して放送番組等に係る情報を入力するという、複製機器を用いた放送番組等の複製の実現における枢要な行為をして」いると判断し、この判断が結論に結びついているように思います。

 以前、この類型の事案における侵害行為の主体の判断においては、最高裁判所昭和63年3月15日判決(クラブキャッツアイ事件)におけるカラオケ法理(「管理・支配」と「利益の帰属」という2つの事情を重視する法理)が、強く影響していることを説明しました。しかし、ロクラクU事件では「管理・支配」について、下線部(c)乃至(e)で検討しているものの、「利益の帰属」については明示的に判示されていません。それでは、本件においては、カラオケ法理は適用されたのでしょうか。ロクラクU事件では、最高裁判所裁判官の補足意見が付されていますので、この点も確認してみましょう。

 

補足意見

カラオケ法理は、法概念の規範的解釈として、一般的な法解釈の手法の一つにすぎないのであり、これを何か特殊な法理論であるかのようにみなすのは適当ではないと思われる。したがって、(f)考慮されるべき要素も、行為類型によって変わり得るのであり、行為に対する管理、支配と利益の帰属という二要素を固定的なものと考えるべきではない。この二要素は、社会的、経済的な観点から行為の主体を検討する際に、多くの場合、重要な要素であるというにとどまる。(中略)本件で提供されているのは、テレビ放送の受信、録画に特化したサービスであって、被上告人の事業は放送されたテレビ番組なくしては成立し得ないものであり、利用者もテレビ番組を録画、視聴できるというサービスに対して料金を支払っていると評価するのが自然だからである。その意味で、著作権ないし著作隣接権利用による経済的利益の帰属も肯定できるように思う。(g)もっとも、本件は、親機に対する管理、支配が認められれば、被上告人を本件録画の主体であると認定することができるから、上記利益の帰属に関する評価が、結論を左右するわけではない。

 

 補足意見では、下線部(f)において「管理、支配と利益の帰属という二要素を固定的なものと考えるべきではない」と判示し、下線部(g)において「もっとも、本件は、親機に対する管理、支配が認められれば、被上告人を本件録画の主体であると認定することができるから、上記利益の帰属に関する評価が、結論を左右するわけではない。」と判示しています。この判示からすると、本件では、カラオケ法理を適用していないのではなく、カラオケ法理を適用したけれども、「利益の帰属」など考慮しなくても「管理、支配」を考慮すれば侵害の主体を認定できる事案なので「利益の帰属」を考慮するまでもなく複製の主体を判断に過ぎないと評価することもできるように思います。いずれにせよ、実務としては、本件でカラオケ法理が適用されたか否かということよりも、最高裁判所が、下線部(a)のサービス(録画予約サービス)においては、下線部(d)(e)の事情を考慮してサービス提供者を複製の主体と判断しているということの方が重要であるように思いますので、カラオケ法理の適用の有無については、この程度にとどめ、もう1つのまねきTV事件に言及しようと思います。

 

3 まねきTV事件における公衆送信の主体の判断

 まねきTV事件で問題となった権利は、複製権ではなく、放送についての送信可能化権(著作権法99条の2)と放送番組の公衆送信権(著作権法第23条)です。では、最高裁判所の送信の主体に関する判示を見てみましょう。 最高裁判所平成23年1月18日判決(まねきTV事件)自動公衆送信が、当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置の使用を前提としていることに鑑みると、(a)その主体は、当該装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当であり、(b)当該装置が公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており、これに継続的に情報が入力されている場合には、(c)当該装置に情報を入力する者が送信の主体であると解するのが相当である。

 

 この判決は、下線部(a)で、送信主体の判断基準の一般論を判示した上、下線部(b)で、本件の事案に即した場面における基準を示し、下線部(c)で、結論を示しているように思います。下線部(a)は一般論ですので、本件以外における送信の主体の判断においても適用されると思います。これに対し、下線部(b)は、「当該装置が公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており、これに継続的に情報が入力されている場合」に場面を想定した判示ですので、本件と類似した状況を想定した判示といえそうです。そして、下線部(b)で示されている場合の結論として、下線部(c)のように「当該装置(自動公衆送信装置)に情報を入力する者が送信の主体であると解するのが相当」であると判示しているわけです。

 

4「自動公衆送信装置」の該当性についての判断

 まねきTV事件では、送信の主体についての判断のみならず、「自動公衆送信装置」の該当性についても判示していますので、この点についても紹介しておきます。

 

最高裁判所平成23年1月18日判決(まねきTV事件)

公衆送信は、送信の主体からみて公衆によって直接受信されることを目的とする送信をいう(同項7号の2)ところ、著作権法が送信可能化を規制の対象となる行為として規定した趣旨、目的は、公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行う送信(後に自動公衆送信として定義規定が置かれたもの)が既に規制の対象とされていた状況の下で、現に自動公衆送信が行われるに至る前の準備段階の行為を規制することにある。このことからすれば、下線部(a)公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより、当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は、(b)これがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても、当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは、自動公衆送信装置に当たるというべきである。(中略)(d)本件サービスの利用者は不特定の者として公衆に当たるから、(e)ベースステーションを用いて行われる送信は自動公衆送信であり、したがって、ベースステーションは自動公衆送信装置に当たる。そうすると、インターネットに接続している自動公衆送信装置であるベースステーションに本件放送を入力する行為は、本件放送の送信可能化に当たるというべきである。

 

 この判示の内容は、多くの専門家が頭を悩ませているようです。特に、下線部(b)「これがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても、当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは、自動公衆送信装置に当たる」という判示の内容について意味不明であるという声が聞こえてきます。一見すると、「当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは、自動公衆送信装置に当たる」という判示がトートロジーのように見えるからです。非常にわかりにくい判示なのですが、下線部(d)(e)の記述もあわせて考えると、個々のベースステーションがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信するという1対1の送信を行う機能を有するにすぎない場合であっても、本件サービス(まねきTV事件のサービス)のように不特定の利用者を対象とするサービスで利用する場合には、「自動公衆送信装置」に当たると判断しているのではないかと思います。個々の装置ではなく、装置が利用されるサービスとの関係で「公衆」に該当するか否かという点を判断している点に注意する必要がありそうです。

 

5 まとめ

 今回は、ロクラクU事件及びまねきTV事件の最高裁判所の判示内容(特に、複製及び送信における主体性の判断と自動公衆送信装置の該当性に関する判断)を紹介しました。次回は、ロクラクU事件及びまねきTV事件の最高裁判所の判示内容が、他のサービスに及ぼす影響について検討してみます。

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