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 昨今、クラウド・コンピューティングに関する話題があふれています。米国のIT企業のみならず、日本国内の大手ベンダーも、クラウド・コンピューティングを利用したサービスを開始したとの報道が多数されています。しかしながら、クラウド・コンピューティングに関する法律問題は、未だ、十分な整理がされていないように思います。
 そこで、今回は、クラウド・コンピューティングに関する法律問題を、初心者向けに整理していきたいと思います。

1 クラウド・コンピューティングの概要

 クラウド・コンピューティングの定義は、サービスを提供している各会社によって様々ではないかと思いますが、概ね共通しているのは、「インターネットを経由で、サービス(ソフトウェアやデータの提供等)を受ける」という点ではないかと思います。大雑把にいうと、ハードウェア又はソフトウェアの全部又は一部を、ネットワーク経由で提供する事業者(以下「クラウド事業者」といいます。)とクラウド事業者が提供するこれらのサービス(以下「クラウド・サービス」といいます。)を利用して社内又は第三者に対するサービスを提供するユーザ企業との間で利用されるシステムの形態を意味する用語と言ってよいのではないかと思います。 クラウドという言葉は、システム構成図を記載する時に、インターネット等のネットワークを雲の図柄で表現することから採用されたネーミングのようです。

クラウド概念図.bmp

図1 クラウド・コンピューティングの概念図

 これだけ聞くと、従来から存在していたサービス、例えば、ASPやSaaS等と何が違うのかという気がしてきます。論者によっては違う意味で使用していることもあるかのかも知れませんが、私は、クラウド・コンピューティングという用語は、これらの概念をすべて含む包括的な用語なのではないかと感じています。クラウド・コンピューティングという用語が、今までに存在しなかったサービスに関する概念を意味するものではないにもかかわらず、これほどまでに注目を浴びている理由は、コンピュータの処理能力等の向上により、提供できるサービスの種類が格段に増大したからではないかと思います。

 

2 法律問題の検討に適した分類

 クラウド・コンピューティングを提供されるクラウド・サービスの種類によって分類しようとすると、概ね以下のようになるのではないかと思います。

表1 クラウド・サービスの種類による分類

 名称

内容 

 SaaS

Software as a Service

アプリケーションソフトウェアをインターネット等のネットワーク経由で提供するサービス。

 PaaS

Platform as a Service

アプリケーションソフトウェアを稼動させるためのプラットフォーム機能をインターネット等のネットワーク経由で提供するサービス。

 HaaS 

 (Hardware as a Service)

CPUやハードディスク等のハードウェアをインターネット等のネットワーク経由で提供するサービス。

 しかし、このようなクラウド・サービスの分類は、クラウド・コンピューティングによって生じる法律問題を整理する手段としては適していません。クラウド・コンピューティングの法律問題を検討する上で、もっとも考慮しなければならないのは、インターネット等のネットワーク上のサーバを利用してサービスが提供されるため、情報の管理状況やサーバの運用・保守の状況を、クラウド・コンピューティングを利用するユーザが、直接監視することができないという点にあります。
 従って、ここでは、クラウド・サービスの分類ではなく、クラウド・サービスを提供するサーバが、どのような状況で管理されているのかという視点から、下記の表2のようにパブリック・クラウドとプライベート・クラウドに分類して、話をすすめたいと思います。

表2 サーバの管理状況による分類

 名称

内容 

 プライベート・クラウド          

ユーザ企業又はそのグループ企業の中にサーバ等のハードウェアが設置された状態で提供されるクラウド・コンピューティング

 パブリック・クラウド ユーザ企業又はそのグループ企業の外にサーバ等のハードウェアが設置された状態で提供されるクラウド・コンピューティング

 プライベート・クラウドの場合には、ユーザ企業又はそのグループ企業の中にサーバ等のハードウェアが設置されているのですから、第三者にサーバの運用・保守業務を委託したとしても、第三者による業務の遂行状況を直接監視できますので、あまり、大きな問題にはならないように思います。
 しかし、パブリック・クラウドの場合には、情報が蓄積されたサーバ等のハードウェアがクラウド・コンピューティングにより提供されるサービスを利用するユーザ企業又はそのグループ企業の外に設置されるため、第三者にサーバの運用・保守業務を委託した場合に、情報の管理状況やサーバの運用・保守状況を、ユーザ企業が直接監視できなくなります。
 クラウド・コンピューティングを採用した場合、このような事情により、様々な問題を検討する必要性が生じることになるわけです。

パブリックとプライベートの概念図.bmp

図2 パブリック・クラウドとプライベート・クラウドの概念図

3 まとめ
 今回は、まず手始めとして、クラウド・コンピューティングの概念を整理するとともに、クラウド・コンピューティングによって生じる問題点は、これを利用するユーザ企業において、サーバ等の運用・保守業務や情報管理の状況を監視することが困難であることに起因するものであることについて説明しました。
 次回以後、サーバ等の運用・保守業務や情報管理の状況を監視することが困難であることに起因する問題として、具体的にどのような問題が発生するのかという点について検討してみようと思います。

以上

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