松島総合法律事務所
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このサイトのトップページにおいて、『「エンジニアだった方が、なぜ弁護士になったのでしょうか」これが、依頼者の方に聞かれるもっとも多い質問です。』と述べましたが、この質問には続きがあります。続きというのは、この質問に付随して聞かれる2つの質問があるという意味です。一つは、「よく退職して司法試験を受験するという決断をしましたね。なぜそのような決断をされたのですか?」的な質問です。もう一つは「退職してよかったですか?」という質問です。ちょうどよい機会ですので、この2つの質問にも、この場を使って回答してしまおうと思います。
一つ目の質問は、「よく退職して司法試験を受験するという決断をしましたね。なぜそのような決断をされたのですか?」という質問です。この質問をされる方は、退職して転職することの方が、在籍していた会社にとどまることよりも大変なことであるという前提にたっているように思います。しかし、私は、退職(転職)をしない、即ち、会社に残るという決断をすることも、退職(転職)するという決断をするのと同等に大変な決断ではないかと思います。私の場合は、司法試験を受験して弁護士になるために退職したので、受験勉強等の準備が大変ではないかと思われるのかも知れませんが、電機メーカに残るという選択肢を選んだ場合であっても、最先端の技術を勉強し続けたうえ、他の会社がまだ成功していないような高性能な装置の開発を実現したり、大規模システムを実用化したりしなければならないのですから、これだって並大抵の努力ではできません。なので、私は、この質問に対しては、「会社に残るという決断をすることも大変な決断ですよね」とだけ回答するようにしています。
もう一つは「退職してよかったですか?」という質問です。この質問をされる方は、「弁護士になったのだから、当然退職してよかった」という回答されることを予想しながら質問しているように思います。しかし、私としては、退職(転職)してよかったか否かは、60歳くらいになった時に振り返ってみて初めてわかることなので、今の段階で回答するのは時期尚早ではないかという気がしています。
もっとも、私が以前勤務していた会社の従業員であった場合と、現在の弁護士という職業を比較して、経済的にどのように変化したのか、あるいは、仕事の満足度は増したのかという点については若干コメントできそうです。
経済的な側面に注目し、私が以前勤めていた会社の同期と比較すると、多分、収入は会社の同期よりも少し増えたのではないかと思います(今のところですが)。但し、弁護士の場合は厚生年金があるわけでもなく、退職金がでるわけでもありません(定年はないので、働ける期間は長いかも知れません)。弁護士会の会費の支払いも毎月数万円程度あります。また、今の私は、雇われ弁護士ではないので、怪我や病気で1ヶ月働けなくなった場合などを想定すると、収入が激減することも可能性としては有り得ます(そのような場合に備えた保険はありますが)。そのため、怪我や健康には、かなり配慮するようになりました。健康診断は必ず受けますし、内視鏡の検査まで受けたりしています(お医者さんには、まだ不要ではないかといわれましたが(笑))。 ですので、会社の福利厚生等、もろもろの事情を考慮すると、私が以前勤めていた会社の同期とあまりかわらないのではないかなという気がしています。むしろ、収入が安定しているという面では、会社員の方がよかったかも知れません。
仕事の満足度という意味でいうと、今の方が満足度は高いかもしれません。理由は比較的単純です。電機メーカに勤務していたころの依頼者は、会社を信用して仕事を依頼していただくという側面が強かったのですが、弁護士の場合は、弁護士個人を頼りに依頼をしてもらえるという側面が強いからです。例えば、私の場合、システム開発に関する紛争処理のご相談を受け、訴額が億を超える、かなり高額な訴訟の提起を依頼される場合があります。このような仕事の依頼のされ方は、多分、電機メーカに勤務し続けていたら、なかなか体験できなかったのではないかと思います。ですので、少なくとも、現時点では退職(転職)してよかったと思っています。
以上